私たちはすべて、広大で複雑なこの世界という「劇」の一部です。ヴェーダの世界では私たちが知っている世界は幻想:マーヤであると説いています。この幻想:マーヤの舞台は、魂が学び成長するための壮大な物語です。
私たちの人生は偶然な出来事ではありません。
幻想:マーヤの概念が説明しているのは、私たちが見て体験しているものは究極の現実ではなく、
自己発見、本来の自分との繋がるための道を促すための一種の神聖な幻想であることを示唆しています。
つまり人生は魂の成長のため、魂の回帰のための物語の舞台なのです。
その物語の中で、私たち一人一人はユニークな旅をしています。
私たちの行動や思考、人生で起こる出来事は、カルマ(行為・業)とヴァーサナ(過去からの習性・気質)という二つの強力な力によって影響を受けています。
カルマは宇宙の仕組み、バランスの法則のようなもので
それは、すべての行動はこの宇宙に影響を及ぼし、私たちに重要な教訓を教えてくれる結果が返ってくるということです。
カルマというと悪いイメージがありますが、それはなにかの仕打ちが帰ってくるというような意味合いだけでなく、
単純に良いことも悪いことも何かをすれば、なんらかの結果が生まれるということを説明しているのです。
ヴァーサナは、過去の行為の結果や代々伝わる因習、習慣、性質のような、生まれてくるときに用意された台本のようなもので、私たちがこの生に持ち込むキャラクター、習慣や傾向が記されています。
ヴェーダの理解ではこの仕組みや法則を知り、良いカルマを行い、悪いヴァーサナを減らすことに努める、というのが生き方の指標とされています。
カルマもヴァーサナも、絶対的なものではありません。それはどのように向き合い、どのように生きるかで変えていくことができるものです。
その決意を「サンカルパ」と言います。
これらの力は私たちを導き
私たちの持つ、真の性質と私たち本来の魂を結びつける旅を促してくれる役者のようなものでもあるわけです。
幻想が崩れていくことはエゴにとって痛みを伴いますが、挑戦と経験を経ることで、魂が学び、成長し、最終的には宇宙や他者との調和を見つけることができる、そのような理解をヴェーダンタ哲学では説明しています。